・・・ここは、どこ? どうしてぼくは、ひとりぼっちなの?
まっくらで、誰もいない家。窓も、出口もない。いったいいくつの
部屋があるのか・・・・・
歩きつかれて、ぼくは部屋のすみっこに座りこむ。
ぼくを優しく抱いてくれたあの腕は、どこへいってしまったの?
────ごめんなさい。あなたを、こんな所へ連れてきてしまった私を
◇◇◇◇許して。時が来たら、必ず元の所へ戻してあげるから。
◇◇◇◇ほんとに、ほんとにごめんなさい・・・・
ぼくが、帰りたいと言ってべそをかくと、あのひとはそう言いながら
ぼくを膝にのせて、優しく抱きしめてくれた。
あれは・・・ そう、こんなまっくらのお屋敷じゃなくて、もっと明るくて、
静かで、あたたかい───神殿って言うんだろうか、そんな感じの所だった。
ああ、でももうよく思い出せない。このお屋敷のつめたい暗闇に、そんな
記憶の中のぬくもりも、じわりじわりと 吸いとられていくみたいだ。
早くここを出て神殿に戻らないと、ぼくまでこのお屋敷の暗闇色に
染められてしまう!
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇早く、早く・・・戻りたい!
◇◇─────戻る ・・・・ 神殿に?
ううん、違う。神殿よりもっと、「帰りたいところ」がぼくにはあったはず。
思い出せないけど、そこがきっと、ぼくの「いるべきところ」。
誰か、早くぼくを迎えに来て。このお屋敷から連れ出して!
◇◇◇◇◇早く、早く・・・・・
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇───── ・・・だれ?
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇だれか、いるの・・・・・?
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