水晶宮のレディ・エルム 1
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「いいか、トマス。打ち合わせ通りにすりゃぁ、間違いないんだからな」
「でも〜アニキ、ホントに上手くいくんスかね〜?」
「あたりめぇだ!!お前は手紙を投げ込むだけの簡単な仕事だ!失敗したら、義兄弟の縁を切るからな!」
「はぅ〜・・・・・」 

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「う〜ん、今のところ、依頼は来てないわ」
「そおですか〜」

倫敦の誇る探偵協会の事務所に、アリエスのあからさまにがっかりしたため息が響きわたった。倫敦の誇る少年探偵と少女探偵は、日課として毎日この事務所を訪れる。万博が始まってから一ヶ月、倫敦は何が起こってもちっとも不思議ではないお祭り騒ぎの渦中なのだが。

「最近はどうしちゃったのかしら、依頼がちっとも来ないじゃない〜。あんたがも・ちょっとしっかりしてくれれば、ご指名で依頼とか来るはずなのよ〜?」
コドモのぼくらに、それはないんじゃないかな・・・。
舌の上まで出かかったそんなツッコミを何とか飲み込んで(そんなことしたら、十倍は言い返されるのがオチだ)、エリックは無難なコメントを返す。
「ま、今日も倫敦は平和で何より」
「それはそうなんだけどぉ〜」
年下のエリックにもっともなことを言われて、アリエスはぷうっと頬をふくらませる。事務机に向かうアイリーンが済まなそうに、キレイにマニキュアを塗った手をひらっと返した。
「ごめんなさいね〜。あなたたち向けの依頼があったら、真っ先に連絡してあげるから」
「あっ、いいえそんなっ、アイリーンさんのせいじゃないんですから、そんなに気を使って下さらなくてもいいですよ〜」
目上の人間に対しては、アリエスは滅法礼儀正しい。それじゃ、また寄りますね〜と挨拶を交わして、二人は事務所のドアを開けた。

「さて、これからどうしようかしら。エヴァレット先生に会いに行ってみる?何かお手伝いができるかも」
「そうだね。依頼がないんじゃしょうがないし」
「よっし、決まり!」

万博警備主任のエヴァレットは、万博が始まってからはほとんど毎日、会場に詰めている。エリックたちも時たま会場の見回りを手伝うこともあるのだ。二人はとりあえず商店街へと足を向ける。と、なにやら後ろから、エリックのコートの袖を引っ張るものがあった。
「ん・・・誰?」
アニキ〜と叫んで飛びついてくる相棒のチビではない。エリックが振り返ると、それは一人の少女だった。

見知らぬ少女に袖を引かれ、エリックは驚いて立ちつくした。年の頃は・・・エリックよりは年下だが、相棒のチビよりは上らしい。じっと見上げてくる、意志の固そうな瞳。だが、何よりその身なりの良さが目を引いた。アクセサリーや仕立ての高級な服装から、明らかにかなりの身分のお嬢様とわかる。こんな所を一人で歩いていて良いはずがない。
「君は誰?ぼくたちに何か用なの?」
「お嬢ちゃん、迷子になったの?一人で歩いていると危ないわよ」
エリックとアリエスが、もっともな問いをかけると、少女はきゅっと結んでいた唇を開いた。
「あなたは、名探偵・エヴァレットのところのエリックでしょう?探偵協会から出てくる子供なんて、他にいないもの。わたしはセシル。今日一日、あなたたちを雇いたいの」

 

 


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開発コードは「ネコと少女と精霊探偵(仮)」。そう、2年くらい前に、3話まで載っけてほったらかしにしたアレです。今度こそ何とかなりそうなので・・・。いちおう6、7話までの予定。(2002.08.23 ....UP) (2000.8.24...proto type) 

 

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