「From Here to Eternity」




「これで、準備は全て整った」

大広間に、ゴドリック・グリフィンドールの声が響き渡った。
壁に翻る紋章の旗、魔法で夜空を模した天井、しつらえられた4本の長いテーブル。
明日にはここが、「生徒たち」でいっぱいになるはずだ。
ようやく開校までこぎつけた、『ホグワーツ魔法魔術学校』・・・・・
四人の「創設者」は、それぞれの感慨を持って、壇上から広間を見下ろしていた。

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」




「・・・それじゃ、今夜はもう休みましょう?明日は大変な一日になるんだから」
しばらく続いた沈黙を破ったのはヘルガだった。
「そうだな。初めての生徒たちの前で、寝不足を披露するわけにはいかないからな」
冗談めかしてゴドリックが応える。
その隣で、くす、とロウェナが笑みを漏らした。
「そんなこと言って、あなたなんて、緊張して眠れないんじゃない?」
「うふふ、あたしの睡眠薬、分けてあげようか?」

女性二人にからかわれ、ゴドリックは慌てて壇を降りた。
「い、いらないよ!!それじゃ、お休み!」
そのまま足早に大広間を出ていく。
「じゃあ、あたしも。お休み」
ヘルガもぴょこんと壇から飛び降り、ドアの前で手を振って大広間から姿を消した。

大広間はサラザールとロウェナ、二人だけになった。



「いよいよ明日ね。」
ロウェナがぽつりとつぶやく。
「ああ・・・・・いろいろあったな」
サラザールが答える。

「で、あなたはここを出て行くつもりなのね」
それまで大広間を見渡していた視線をまっすぐにサラザールに向けて、ロウェナが問うた。
「相変わらず単刀直入にものを言う・・・・」
サラザールはいささか苦笑しながらも、ロウェナの視線を受け止めた。

出て行く、とはもちろんこの大広間のことではない。
四人で作り上げたこのホグワーツを、である。
サラザールが今まで、そのような意思表示をしたことはなかった。
だが、
「わたしだけではないわ。あの二人だってそう思っているはずよ」
「私が出て行けばいいと、そう思っているんだろう?」

「そんなッ────────・・・・・・・・・・・・」

自嘲的なサラザールの言葉に、ロウェナは思わずサラザールを睨みつける。
が、その視線はすぐに床に落とされた。
「わ、わたしは・・・・・」

「おまえが気に病むことはない。今さらやり直せるはずもないんだ・・・・・。
私たちは理想を形にした。それがこのホグワーツだ。
だが、ここは私にとってはたった一つだけ瑕疵がある。だから私はこれからさらなる
理想を求めに行く・・・そういうことだ」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

たった一つの瑕疵・・・・・入学者資格。
たった一つではあるが、あまりにも大きな問題だった。
議論に議論を重ね、こうして開校にこぎつけたものの、それは四人の間に深く影を
落とした。サラザールは、一人ホグワーツを去ることで、それに決着をつけようと
しているのだ。

「おまえに理解してもらえなかったのは、残念だな・・・。私たち四人とも、個性は
バラバラだったが、その中でおまえが一番、私に近いと思っていた・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・」
ロウェナは床に落としていた視線をサラザールに戻し、静かにほほえんだ。
「わたしも、そう思っていたわ」


ひたすらに知識を追い求めるロウェナ。自らの理想を至上としたサラザール。
二人の本質は、深いところでは同じだと、ロウェナは感じていた。
けれども、もう、やり直せないのだ。
最高位の魔法使いと言われても、たったひとつの願いさえ叶えることができないのだ・・・・・。

「・・・・・・ロウェナ」
サラザールの手が、つとロウェナの頬に伸ばされた。
ふわりと、腰まで届く銀の髪をすくい取る。
見上げるロウェナ、やがてその閉じた瞼に影が落ち・・・・・

「おまえは、私の知る限り、最高の魔法使いだよ・・・・・・・・・・・・・」


さらりと銀の髪が胸に落ち、ロウェナが目を開いたときには、もう大広間には彼女
一人きりだった。

「・・・・さよなら、サラザール・・・・・・・・・・」

ばさりと髪を背中に流し、ロウェナも大広間を後にした。






ゆらゆらと天井に浮かぶ一千本の幻のロウソク。

・・・それは、一千年以上もそこに在る彼らが最初に照らし出した出来事だった。






《END》 ...2003.02.17




 


いろいろとサイトを見て回ったら、なんだかすっきりしないモヤモヤが
発生してしまったので、とりあえず自分でも書いてみました。
私はサラロウェをイチオシしたい・・・。クールビューティーカプでひとつ。
そういえば書いてから思い出したのですが、確か校作ってからしばらくは
仲良くやっていたって、マクゴナガル先生が話していたような・・・。
後のまつりです。





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