小夜曲
・えろ
・ストさんがややめS
・とりあえずカオスナンバーズは同一人物説




 酷いことをしてしまった。
 金の髪が床に散らばり、白い肌に幾つもの噛み跡が残る。手首には押さえつけていた時の指の跡がくっきりと───そればかりか、腕や脚にも弦を巻きつけた細い筋が幾本も紅く残っている。
 目を逸らしたくなるような有り様だったが、全て自分の仕業なのだ。
「なんてことを……」
 はっきりと覚えている。ヘブンズ・ストリングスのマスターが素晴らしく心躍るデュエルを展開したこと。
 ギミックパペット・デッキのエースカードとして召喚され、RUMでカオスナンバーズに変化した────デビルズ・ストリングス召喚は初めてではなかったが、慣れたとは到底言いがたい。
自分が自分でなくなる焦燥感と、破壊衝動に身を委ねる快感────もとより力を振るうのはマスターの命によるものだったが、それが自分の力なのか、あるいは自分がもう一人いるようなものなのか……いつも答えが出ないままバトルをし、マスターに勝利を捧げるのだ。
 デッキに戻ってもまだデュエルの興奮が冷めず、ヘブンズ・ストリングスを待っていたらしいスカイ・ペガサスに会うなりその場に組み伏せた。
「な、に……!?や……っ………」
 バトルの高揚感のままに白い肌に爪を立て、弦を絡ませ、紅く五線とスコアを刻んでいく。
 震える身体と悲鳴のような喘ぎがゾクゾクするような和音を紡ぐ。まだ身体に残る破壊の音色を、旋律を、彼の中に────
「痛っ……、はぁ……ああっ………や、あ……っ…!」



 後々まで残るような傷は付けていないはず………。それでも、見下ろした身体にあちこち残る痕は痛々しく、付けた本人に訴えてくる。普段から情事の際は多少Sっ気が入るとはいえ、スパイスのような言葉責めや焦らしプレイくらいで、こんな物理的な傷は付けたことがなかった。
「私としたことが………」
 冷静になった今、罪悪感に苛まれながら、首筋に残る紅い痕にそっと手を伸ばす。
「…ん………」
 触れる直前に、僅かな吐息が漏れた。慌てて手を引くと、長い睫毛を震わせて碧の瞳が開かれた。
「あ……………………」
 ぼんやりと彷徨う視線がヘブンズ・ストリングスを見上げる。
 咎められるだろうか。嫌われてしまうだろうか。
「………………」
 どこか痛むのか、そろりと身体を起こすスカイ・ペガサスに手を添えると、まだ情事の熱の残る身体を素直に預けてきた。差し出した手を拒絶されなかったことに少し安心しながら、散らばった髪を掬い整えた。
「ごめんなさい……あんなこと、するつもりでは……」
 なかった、と言えるのだろうか。デビルズ・ストリングスがもう一人の自分であることは違いない。たおやかな天馬の精霊を押し倒すたび、理性の箍を外し思うさま陵辱の限りを尽くしたいと心のどこかで思ってはいなかったか。
「あんな、こと……」
「……大丈夫……。少し驚いたが……」
 スカイ・ペガサスの隠れていない方の瞳がヘブンズ・ストリングスを見上げる。深い森の奥に佇む泉のような静かなその色は、曇りもせず揺るぎもしない。
「驚いたが……悪くはなかった」
 碧の瞳が瞬きすると共に口の端が僅かに上がる。笑っているのだ。
「カオスナンバーズ……もう一人の貴方……。どちらも貴方であることには変わりはない。私もいつか、カオスナンバーズになれるのなら………」
 腕を伸ばし、するりとヘブンズ・ストリングスの首に絡めてきた。
「その時は覚悟するといい」
「……あなたという人は……!」
「いつもと違う貴方も悪くはなかったが、少し刺激的すぎたから……今度は優しくしてもらえるか……?」
 耳たぶに齧り付くように囁きながら続きを誘う。
「そうですね……では続きは小夜曲にしましょうか……」

 光と闇を裡に秘めたナンバーズたちの夜は長く。


(了)

 

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2015/06/29 ストマハはドルベにゃんに再会できてなくてギミパペデッキに入ってるせふれルートと、ED後ドルベにゃんと幸せに暮らしてるマッハさんがストさんに一目惚れルートあったけど、どっちでもない感じになった。使いたい単語ナンバーツーの「たおやか」が使えて大満足。あとストさんはどんな音楽用語もエロワードに聞こえてしまう素敵いかがわ紳士ですね!素敵!

 

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