ただ隣に
・凌ドル

 

 

現世で最初に相対したのは異次元の狭間サルガッソーだった。
遊馬はベクターと、カイトはミザエルと、それぞれ因縁の相手とデュエルを。俺の相手となったそいつはドルベと名乗った。人間界に現れたことはない……初めて聞く名だった。
互いに余裕たっぷりを装いながら、そうじゃないのはわかっている。そんな中で、外野に卑怯と罵られながら「サルガッソーの灯台」を躊躇なく使う、むしろ冷静に勝ちを取りに来る戦略は嫌いじゃないとさえ思った。
結局そのデュエルはサルガッソーの崩壊によって中断され、引き際も鮮やかにドルベたちは去って行った。
敵とはいえやるじゃねえか……なんて言うと思ったか?
所詮奴らはバリアンだ。恐るべき正体を現したベクターみたいなクズばかりに決まってる。
今度会ったら絶対負かす、そう思っていた。

二度目に会ったのは、強力なナンバーズが封印されているというどこかの遺跡。
人間の姿をしてナッシュと名乗っていたが、あんな山奥に都合良く旅行者がいるものかと最初からずっと疑っていたら、何の偶然か遺跡の罠で二人きりに分断された。
これなら遊馬に近付かれることはないし、監視するにも好都合だ。
ビリっとくるような緊張感の中、なんとか罠を回避しながら進んでいくと、俺が疑っていると知ってか時折ちらりとこちらの様子を伺うような視線を投げかけてくる。
疑いを解こうと言い訳をしてくるわけじゃない。煽っているわけでもない。
落ち着いた色の目が何か言いたげに思えてイライラが最高潮に達したあたりでその部屋に行き着いた。
いにしえの王国の英雄と愛馬ペガサスの物語が描かれているという壁画にそいつは釘付けになった。自分がそれを読めること、それからその内容に動揺もしているようだった。
今ならわかる。
まだ記憶を取り戻してはいなかったものの、それはドルベ自身の物語だったからだ────。

いつからだ。
いつから俺がナッシュだと知っていた?

確かにあいつはドルベに違いない。
前世で妹を亡くした俺の隣に立ち、煽るでもなく止めるでもなく共に戦場に出た。
妹にさえ話せない相談事をしたこともある。王としてあまりに行き過ぎた時は止めてくれることもあった。
なのに普段は
「鼓舞する者も、諌める者も、君の周りにはいくらでもいる。だから私の役割はきっと────」
そう言って前世でも、バリアンの仲間としても、あいつはただいつも静かに俺の隣に立っていてくれたのだ。


前世の戦の結末をはっきり思い出したわけじゃない。
でも、あの遺跡の伝説が本当なら、前世のドルベは仲間の騎士の裏切りに遭って命を落とし、そして今も同じことを繰り返そうとしている。
どうしてだ。
どうしてそれほどまでに仲間を信じることができる?
俺を信じることができる?
「君が信じるに足りる私の友だからだ」という、ただそれだけで。

「やめるんだ、ドルベ──────!!!」
お前の静かな声が俺を、ナッシュを目覚めさせた。

俺の声は、届かない。


(了)

 

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2013/11/27 Pixiv投下。次回予告「ドルベ最後の誓い!!」の後書いたもの。

 

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