昔日モノクローム

・黒馬×マッハ
・微エロ

 

 

「……マッハ」
低く抑えた声が私の名を呼ぶ。
黒曜石のような美しい瞳に私が映っている。
「……っ……」
覆い被さってくるそれは、黒い影のように私を包み込んだ。

戦場での彼は主人に似た猛々しさで敵兵を薙ぎ倒しながら駆け抜ける。
敵からすれば災厄を呼ぶ黒い悪魔に見えることだろう。
威嚇のいななきも、高く上げられた前脚も、黒光りする体躯も、
敵にとっては恐怖の対象でしかないだろうそれは、戦場においても私を魅了する。
私とは、何もかも違う────空を飛ぶことが至上とされる私には
彼のように美しく逞しい筋肉を身に付けることはできない。
私がそう言うと、彼は「俺はあんたの優雅で細身な身体が綺麗だって思うのに」と言う。
お互いに、自分の持ち得ないものを憧れの眼差しで見詰めているのだ。

「ん……っ…」
首筋を甘噛みされる。
触れ合う太腿に熱く躍動する筋肉を感じる。
「や、あ……っ……」
「マッハ……好きだ……っ……」
吐息混じりの甘い声で苦しげに囁かれると、嬉しさと同時に切なさが心を満たす。
「あ、あぁ……っ……」
熱く滾る彼自身が私の中に打ち込まれる。
繋がる────交わる……彼に抱かれることに意味などないのに、
「…は、あ…っ……」
「……マッハ…っ……」
それでも彼の熱と欲が私を満たす────満たされる。欲しくてたまらない。
「……あぁ…っ、 ───…っ……」
昇り詰める瞬間に呼んだはずの彼の名は、声にならなかった────。



「マッハ……」
上がった息がようやく落ち着き、彼はまた静かな声で私の名を呼んだ。
首を絡め、彼の黒い鬣を食む。短く整えられた硬めのそれが愛おしくてたまらない。
だからこそ苦しい。
「私にはあなたの仔を産むことはできないんだ……すまない……」
こんなにも美しく逞しい彼の種を、どんなに愛していても継ぐことはできない───

「────………」

答える言葉の代わりに、彼はそっと優しく私の鬣を食んだ。


(了)

 

2013/10/21 Privetter投下。脳内ビジュアルは擬人化でも馬でもお好みでどうぞ!

 

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