「リゼル……」
低い声が、信じられないほどの甘さを帯びて囁く。
「私のものだ……」
「ん……」
魔王ルシフェルに抱き締められ、少年はうっとりと微笑んだ……
「違うわ…! あれは絶対『ニヤリ』よ……!」
「あーもー、ルシフェルってば……!」
物陰で二人の様子を伺っていたルカとアリスはやきもきしながら小声を漏らす。
魔王ルシフェルに大変なものを盗んでいかれたリゼルは、つまり魔王ルシフェルに何故だか惚れてしまったリゼルは、「戦いが終わったらこの世界から消える」と宣言したルシフェルをレガイアに引き留めようとあの手この手で距離を縮めていき、どこで知恵を付けてきたのかとうとう色仕掛けまで使うようになったのだ。
ルカが魔王と交わした約束───遍在者に勝ったら願いを叶える───はまだ生きていたが、この様子では、やっぱりなかったことに……とか言い出すのも時間の問題かも知れない。
「目的のためなら手段を選ばない……リゼル…恐ろしい子……!」
「…まあ、ルシフェルも、創られてからずっと陰の月にヒキコモリっきりだったわけだし……」
「言われてみればそうね……。小学生並みのピュアピュアハートじゃ抵抗できないわー。あの魔性の子には」
彼に与えられた使命はただ一つ、永遠に人間の天敵であり続けること。創造主の定めた運命に縛られ、繰り返される敗北とそれでも絶望することのない闘争心だけを与えられてきた。
そんなルシフェルが自我に目覚め、やっと自由を得たのだ。
「やっぱり、消えるなんて勿体ないよね……」
「……ルカ? 何か言った?」
「うん、まあ……別にいいんじゃないかなー……って…」
「え〜〜、マジでー?」
この世に生を受け、生きること、何かを大切に思うこと、誰かを好きになること。
それを知るために、もう少しこの世界にいてみてもいいんじゃない?
……と、伝えてみたかったのだけれど、それはリゼルが代わりにやってくれそうだ。
自分は自分の役割を果たそうと、彼らへの愛おしさを秘めてルカは笑うのだった。
「いつもランカイン 5回暴発
ア・イ・シ・テ・ルのサイン〜♪
未来予想図は〜 ホラ思ったとおりに〜〜♪」
「……て、アンタそれ何ターンかかるのよー!?」
「っていうかその前に死ぬから!2回くらいで!!」
魔王の完全なる陥落も、たぶん目前なのだろう。
《END》 ...2009/08/08
シリアスに行き詰まったのでラブコメ。
色々と甘いのは仕方ないんだ。幸せになりたいんだ!(私が)
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