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カーン…… カーン…… ──── イベント終了を告げる鐘の音が響き渡る。 「終わった〜!」 「お疲れさまぁ!」 二日間ひたすらに走り続けてきた周囲の者たちが、口々に互いを労いながら、余韻を惜しむように疾走をゆるゆるとした歩みへと切り換えていった。 そんな中、セッカが隣を振り向くと、ずっと一緒にここまで来た友達の笑顔。 「お疲れさま、セッカさん」 「ああ───アルシュータ、さん……」 いつもイベント終了の時刻が近付くと、セッカはもう何も考えられなくなりただ前へと足を運ぶ。アルシュータとぴったり並んでいた瞬間があったような気もするが、追いつこうとか後ろを離そうとか、そんな意識もどこかへ飛んで、ただ遠いゴールだけを思う────そしてイベントが終わってから、慌ててその姿を確かめるのだ。 「よかった……今回も、」 「ええ。一緒に走ってこられましたね」 周囲の皆と同じようにゆるゆると歩きながら、アルシュータが嬉しそうに笑う。 毎回とても大変な思いをするけれど、それ以上に一緒に何かをするのは楽しかった。 セッカが何もかも忘れて前のめりで走っていても隣に付いてきてくれる。 それは奇跡なのか、それとも──── 「アルシュータさん、あのね………」 歩きながら、アルシュータの左手に自分の右手を滑り込ませる。 「ん…………っ、」 少し驚いたように動きを止めてから、そっと握り返してくれた。 「お疲れさま、それと───次も頑張ろうね」 今回も並んで終われて嬉しい……アルシュータさんと一緒でよかった……それから─── 言葉にできない色々な思いが溢れ、心地良い疲労感と相まって何も言えなくなる。 アルシュータは笑ってそうですね、と頷いて、手を繋いだまま二人でゆるゆると歩き続けていった。 ────一緒に……できれば、最初から最後まで…… 今はただ、いつか一緒にたどり着く遠いゴールを思う。 (了)
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