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・R:X、アカシャ盤建設とかアウラがシックザールに捕まるより前な感じ
・クビアたんはアウラが呼び出した騎士団じゃなくて本物の方です
・微エロです
・クビアたんがフリューゲルにつんつんされます

 




「僕を……消すの?」
男がCC社側の人間だと知って、捕えられたそのPCは絶望的な面持ちで呟いた。
自分がNPCであり、イレギュラーな放浪AIであることを十分に自覚しているのだ。
その気になればこのシックザールのアジトなどエリアごと消滅させてしまえるほどの力を持つイレギュラーすぎる彼に対して万全の策を練り上げた甲斐があった。幾重にもかけられたプロテクトを模した鎖と拘束具に縛られ、力を振るうどころか身動きさえできないでいる。
「消すだなんて、そんな勿体ないことはしないさ」
The Worldに二人といない、特別なPCだ。AIとしての個性などという哲学的心理学的な話ではない。伝説の.hackersの勇者カイト、そのPCと「腕輪」の反存在クビア───システム側にとってこれほど特別なPCは滅多にいるものではない。
「俺たちは…CC社は、もっとよくThe Worldのことを知りたいだけなんだよ」
天才ハロルド・ヒューイックが作り上げた世界の不可解なシステム、自律性……その最たるものが女神アウラだ。
「君はカイトの反存在だが、そもそもの来歴は…アウラのプロトタイプ」
「……!」
「反存在という設定と力は、世界(モルガナ)によって後付けされたものだ。「強大な力が生まれる時、反存在という歪みが生じる」というハロルドのプログラムに沿ってね。そこらへんも非常に興味深いプロセスだが、今研究しているのは「アウラ」なんでね…つまり、アウラと同じ、ハロルドとモルガナの実子である君を解析すれば、あるいは…と思っている」
「…そんなことしたって、アウラは帰って来ないよ!」
「まあそれはそうかもしれないけどさ、俺たちもとりあえず仕事しなきゃなんないから」
「…なんだよそれ…」

さっそく仕事にかかろうと、床に転がっているクビアを抱え上げて椅子状の解析台に乗せる。
クビアを捕えて帰って来てからずっとそのままだった戦闘モードPCを通常モードの姿に切り換えるとクビアが軽く息を飲む気配がした。
「あー、このPC?さっきのは超本気戦闘用でね、色んな技が使えるよーになるの。なかなかのもんだったでしょ」
クビアの力を封じる特殊弾を放つ銃も戦闘用PCのスキルだった。
まともに喰らったらPC破損どころか未帰還者にもなりかねないデータドレイン、軽いチート行為なら右手を一振りするだけでも可能だし、なにより触手を持つ巨大な怪物の形態に変身されたら到底勝ち目はない。クビアゴモラを無限に生み出されてThe Worldの危機にも繋がりかねない。そうでなくても廃プレイヤー並のレベルと戦闘能力を有している。クビアの持つ厄介なスキルを一つ一つ封じて、なんとか普通のPCの姿のまま捕えることができたのだ。
「まあとりあえず、このエフェクトは邪魔だし…」
鎖と拘束具のエフェクトを消すと、椅子の上のクビアは身一つになったが、力が解放されたわけではない。
「ちょっと、大人しくしててねー」
「……っ……」
パスを開こうとパネルを操作すると、パネルから延びた細い光のコードが台の上のクビアに絡み付く。これも電脳空間の中でわかりやすく視覚効果を現しているエフェクトに過ぎないのだが…
「やっ……やだ…!!」
服装は軽装だが、プログラムに隙はない。
綻びを探してあちこちつつき回していると、不意に細い身体がぴくりと跳ねた。
「…んっ……」
「?」
プログラムに問題のある箇所ではなさそうだったが。
おかしな反応をしたクビアのそこに、フリューゲルは直接PCの手で触れてみた。露わになっている腹の、臍のあたりから脇腹へ掌を滑らせる。
「…や…っ、…!」
「…これは…」
さわさわと撫で回すと、何かを堪えるように固く目を閉じて息を詰めている。
「一体、何を……?」
ふと、脳裏に閃く考えがあった。
「いやでも、いくら規格外ったってまさかなあ…?」
PCボディ自体のプロテクトは固く、解析しようにも糸口が見付からない。だとしたら、この反応も…単なるエフェクトなのか。ゲームをよりリアルに見せるための、NPCにアクションを仕掛けたらこんな反応というお決まりのプログラム。
だがそんな対プレイヤー用のプログラムを「クビア」に付加する意味があるとは思えない。
「……「触れられている」、と……?」
前例はある。
モルガナによってThe Worldに取り込まれた「司」、2017年のAIDA現象、そして八相の「碑文使い」PCたち…だが彼らは皆リアルのプレイヤーの精神がThe Worldに取り込まれて、痛みや温かさや五感を得た例だ。
「NPCが…AIが?知覚を得ている…?」
「っく…や……っ…」
脇腹をつんつんと指先でつつくと腰がびくんと揺れた。どうやら弱いところらしい。
「うーん、マジでか…」
AIに知覚をだなんて、どう考えても未来の技術すぎるが、ハロルド・ヒューイックならさもありなん…と思えてしまうのが恐ろしい。
痛みを知らない子供は生きられない、長じて他者を生かすこともできない。
だからこそアウラに自己犠牲プログラムを仕込んでいたということらしいが…
「ん…はぁ…っ…ぁ…」
それは心理的なもので、物理的にとなると話は別だ…プロトタイプのNPCをどこまで組み上げていたのか…
「やだぁ…っ、もう…さ、さわるな…っ…」
考えながら無意識にあちこち撫で回してしまっていたらしく、さすがにクビアも椅子の上でじたばたし始めた。驚いたことに、ちょっと涙目にさえなっている。
「あー、ごめんごめん」
シックザールPCなど足元にも及ばない。
自分が恐ろしく精巧だということに気付いていないんだろうか。
「と、謝っておいてナンだけど、やっぱりこれは解析させてもらわないとねー」
「な…!……っ…!?」
本腰を入れて解析にかかろうと処理を増やすと、さらに数倍に増えた蛍色に光るコードがクビアのあちこちを探り始めた。
「やっ……ぁあ…っ…、やだ…や…っん…」
「おいー、あんまり変な声出すなよ〜」
「…だ…ったら…、こんなの…や、やめ…っ…」
自分に触覚があったらおそらく柔らかいと感じるに違いないふわふわと跳ねる髪を掻き回し、PCボディの表面をくまなく撫で尽くす勢いのオートサーチが服の隙間まで入り込む。
「…っく……ぁ、あ…」
サーチの数本がベルトをくぐり抜けて下衣に入り込み、ざわざわとその辺りを探り始めた。
「そこっ……やぁ……んっ…、…あ…はぁ…っあぁ……」
切なげな吐息と喘ぎ声。寄せられた眉根と目尻に浮かんだ涙。
「…あれ、なんかこれ、ちょっとヤバくない…?」
NPCのプログラム解析。
単語にすればそんな無機質な作業のはずなのに、これは一体何なんだ。
触覚…五感、感覚があるなら性感だってあってもおかしくないだろう。
「ってか…なんの、ため、に…?」
あまり深く考えたくないような気がする。
考えてはいけないような気がする。
それなのにフリューゲルはうっかり、「下」はどうなっているのだろう、と考えてしまった。


ぶっちゃけPCにもNPCにもそれは基本付いていない。
PC作成時に素体を決めたらコスチュームを選んで、後はずっとそのままだ。
イベントやアイテムで衣装を変えることはあっても、素っ裸で歩き回れる仕様にはなっていないから、それが付いていても付いていなくても、普通のプレイヤーは気に留める要素ではないはずだ。もし付いているならそれは物好きなチートPCか、The Worldに有象無象生まれてくる仕様外のNPCか…
「……はぁ…っ……ん…」
「…………」
サーチを一時停止させると、コードの動きもぴたりと止まった。
「…ぁ……な、に…?」
サーチの余韻でとろんと焦点の定まらない目線を向けながら、クビアが呟く。
「うーん、なんていうかね?好奇心っていうか……」
「……?」
「いやいや違う、これは純粋な探究心…ほら俺仕事熱心で研究ヒトスジだからさあ…」
「なっ……!?」
コードに絡み付かれたまま身動きできないでいるクビアのそこに手を伸ばす。
一度知りたいと思ってしまったら止めることができない。
ハロルドが手ずから作ったNPCに付いているのかいないのか…
そしてもし付いていたら…あまり考えたくないが…知覚を持っていることと併せていつか考えなくてはならなのかもしれないが…
「うん、決しておかしな気持ちじゃないんデスヨー、これもアウラと放浪AI研究のため…」
ブツブツ言いながら腰履きになっているズボンのベルトに手を掛ける。
「ちょ……、な、何するのさ…!?」
フリューゲルの意図に気付いたのかクビアが身体を強張らせて声を上げる。
「お、やっぱこれ脱げるのかー。さすが仕様外…」
それじゃちょっとごめんねー、と、ベルトとズボンをまとめて下ろそうとしたその時。


「先生!」
不意に部屋の入口に転送装置の光の輪が現れた。
「あ、ノム君……」
そういえばクビアをやっと捕まえたから解析を始めると助手にメールを送っていたのだった。
「…………………」
光の輪から姿を現したメトロノームはそのままの格好で固まっている。
「ん……?」
椅子の上に光のコードでがんじがらめになった少年PC、マフラーは半分ほどけて服は乱れ、その上から屈み込むような格好のフリューゲルの手がベルトにかけられている。
「…へんたい……」
「えっ!?いや違うよ何言ってんのノム君!?」
「こんな少年に……」
「あっこれ!?これクビアだし!!今は大人しくしてるけど捕まえるのすんごい大変だったんだぜ!?」
「緊縛プレイの上服を脱がそうだなんて……」
「違う!ただの解析だ!!誤解だってば!!」
凍りつくような声音で淡々と非難する助手に歩み寄りながらフリューゲルは必死で弁解する。
「…僕は嫌だって言ったのに、オジサンが無理矢理…僕のこと…っ……」
背後からか弱げな声が聞こえ、振り返るとクビアが伏目+涙目で訴えつつこっそり笑うのが見えた。
「お、お前なあ…」
言ってることは間違ってない。間違ってないのだが…
「解析なんだってば本当に!ほら、ノム君もこっち来て画面見てみなよ〜」
フゥ…とまだ疑わしげな溜息をつきながら、メトロノームもクビアの側に寄ってきた。
「や〜ほんとプロテクト固くってさー」
「なるほど…」
解析画面を覗き込んだメトロノームはやっといつもの優秀な助手モードに戻ったようだ。
二人でかかればなんとか糸口も見付かるかもしれない。
「ま、まだやる気なの…!?」
「あたり前田のクラッカー!」
「先生…それ何十年前のギャグですか…」
「君が自分でプロテクト解いて中身見せてくれるんなら話は早いんだけど?」
「そんなことするわけないだろ!お前たちなんかに絶対見せるもんか!!」
「あらま、そーですか。それじゃ仕方ないね〜」
予想どうり即答で断られたので、フリューゲルがこれ見よがしにパネルに手を伸ばすと表情が一変する。
「やだ…!もう、それは…嫌…!」
余程さっきの触手プレイがお気に召さなかったようだ。
「ふふ〜ん、どうしよっかなー」
横でメトロノームがじっとりと睨みつけている気配がする。
全然そうは見えなくても、これも駆け引きのうちなのだが。クビアが素直にプロテクトを解くとは思っていない。せっかく弱点っぽいものを見つけたのだから、脅してでも宥めてでも自ら解いてくれれば手間が省けるというものだが…
「やだー!やめろったらやめろー!!」
「じゃあ、解いて?」
「やだよ!!」
「……………」
この子にも駆け引きという概念はないようだ。これではただの駄々っ子ではないか。
「話進まないからもうやっちゃうよー」
「それじゃ、僕はこの辺りから…」
「や、やだ…、…っ……」
今にも解析が再開されそうな二人の様子にクビアが再び涙目になりかけた時。


ぴり、と空間にノイズが走った。
「な……」
何だ、と声を発する間もなく部屋を閃光が切り裂いた。
「おわっ!?あぶね!!」
ちょうど人のいないところを狙って走り抜けた閃光に目が眩んで何も見えなくなる。
ああ!とクビアが声を上げ、剣を振るう音がした。
「ま、まさか……」
いやーな予感がする。
閃光が薄れようやく視界が元に戻ったフリューゲルの目に入ったのは、鮮やかな赤い服を纏う双剣士の少年PC。どこから見てもあまりにも明らかすぎるそいつの名は……伝説の.hackersの勇者カイト。
「クビアは返してもらうよ!!」
解放したクビアを背後に庇い、油断なく双剣を構えて間合いを取りながらじりじりと後ずさる。
「出会い頭にデータドレインとは……無茶するねえ」
データドレインの閃光に削られて部屋の半分は文字通り何もない空間と化していた。
クビアが載せられていた椅子も粉々のデータ片となって微かにノイズを閃かせている。
「その剣もやばそうだね……」
たぶんHPだけではなくデータそのものにダメージを与える仕様と見た。
クビア以上の強敵にしてThe World最強チート勇者の登場だ。
「クビアを狙ってる奴らがいるのは知ってた。それがCC社の人だっていうのも。
……言っておくけど、CC社だろうとハッカーだろうと、クビアに手を出したら…許さないよ」
「勇者カイト…現役だったんですね…」
隣でメトロノームが何故か感心したように呟いた。
クビアがいるのだから、対の存在であるカイトのPCが在るのは当然なのだが、ここ何年も目撃された例がなかったのだ。PCデータだけがどこかに保存されているか、放浪AIと化してネットスラムに紛れているか…詳しく調査しないままなんとなくそんな気でいたのだが、これは明らかに「中の人」だ。
「クビア、大丈夫だった?」
「うん……」
カイトが双剣を一本腰に戻し、右手でクビアに触れると、PCボディの表面を幾筋もの光が走り抜ける。
「あー!せっかく封じてたのにー!!」
フリューゲルがあんなに苦労してかけたスキル封じが一瞬で全部解除されてしまった。
「これでクビアも元通り…。ちょうど二対二だけど、どうする?また捕まえる?捕まえに来る…」
「うーん、それはちょっと無謀だねー。むしろ今ちょっと逃げたい」
「先生!!!」
「いやだって無理だろこれ。おっかないもん。エリアごと壊されたら俺たちのPCだって危ないしさあ」

「それじゃ、帰らせてもらうよ」
カイトがやっと剣を下ろした。
「はい〜。なんのお構いもできませんで、どうも…」
番匠屋ファイルやログで見ていたカイトはもう少し物腰柔らかで、まず話し合おうとか言うタイプのように思っていたのだが。
「あ…うん、そうか。そうだよね…」
そのことを指摘されるとカイトはちょっと我に返ったような、きょとんとした表情になった。
「そんなの、攫われたのが僕だからに決まってるじゃない!」
何故かクビアが得意げに言い放つ。
「絶対カイトが助けに来てくれるって思ってた」
「当たり前じゃないか!…っていうか、狙われてるっぽいからネットスラムから出ちゃダメだって言ったのに」
「う……ごめん…」
「あ、やっぱネットスラムにいたんだ?」
「そうだけど、だったら何?」
カイトがじろりとフリューゲルを睨み付ける。
追ってきたら今度こそ色々大変なことになるよ?という目線だ。
「いやいや、もういいデス…。『楽園』を敵に回すほど俺たちだって力も権限もあるわけじゃないし」
「うん。だったら今回のことは許してあげる」
「…どうも、勇者様…」


転送の光の輪を残して二人は消えた。
伝説の勇者もThe Worldの危険物も、『楽園』は全てを抱き留めるのだ。
「帰っちゃいましたね…」
メトロノームはまだ未練がありそうだ。それはフリューゲルも同じこと。
「そだねー。カイトのPCも解析したら面白そうだったんだけどなあ」
「解析……ですか。……もしクビアの解析があんなのだったとカイトに知られたら、それこそタダでは済まなそうですよね」
「………!」
何気なく言ったらしい助手の一言に、フリューゲルの背中を冷たーい汗が流れ落ちた。
「そ、そうだな……」
誘拐して触手プレイ緊縛プレイのあげく脱がそうとしていただなんて知られたら……
「ノム君!今すぐアジトの引っ越しだ!!どっか違うサーバーのなるべく奥の方にプロテクトいっぱいかけて!!!シックザールのメンツにかけてもカイトに突き止められないようなとこに!!!」
「…はいはい…」
伝説は伝説だから伝説なのだ。
惜しい気持ちはあるけれど、できればもう二度と関わるのはよそうとフリューゲルは心に誓うのだった。





《END》 ... (2011/11/13)


 

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つれづれなるままにメモ帳で適当に打ちました…って、ここら辺のSSみんなそうじゃないですか…。色々アレだけどあーこいつしょーがねえなーwと思ってスルーして!だた触手プレイが書きたかっただけなんです本当です
補足
・クビアたんの知覚は元々じゃなくて「Unison Senses...」でカイトさんにインストールしてもらったやつです。

 

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