10「愛してる」その2
「ヘルムート・・・・」
「ん・・・・・?」
「好き。」
「ああ・・・・・」
横向きに寝転がったままのヘルムートを見下ろして、僕は言う。
好きだよ、 好き、 好きです。
繰り返しつぶやく僕の言葉に、ヘルムートは閉じていた瞳をわずかに開き、口の端でふと笑う。
好きだよ、 好き、 好きです。
「すき・・・・・・、・・・・あ・・・・・・」
「・・・・、『あ』・・・・・?」
いつの間にかヘルムートは、僕を見上げる姿勢になっていた。
紅い瞳が僕を捉える。
見つめられて心臓がドクンと跳ね、弾みで「その言葉」は形にならないまま喉の奥に消えた。
「・・・なんでもない・・・・・」
今日は言えるかと思ったのに。
力が抜けて、ヘルムートの隣に倒れこんでそのまま抱きついたら、ヘルムートも僕を抱き返してくれた。
そっと髪を撫で、僕の耳元で囁く。
「愛してる・・・・」
「うん・・・・」
耳に心地よく響くその言葉に僕は眼を閉じた。
その言葉を口にするには僕はまだまだ足りない気がするんだ。
ヘルムートみたいなオトナの余裕とか・・・
もう伸びない身長とか・・・
永遠に縮まらない年の差も・・・、僕にその言葉を躊躇わせる。
今日も言えない。
たぶん明日も。
愛してる。
《END》 ...2006.08.19
同じお題でもうひとつ書いてしまいました。永遠に「愛してる」なんて言えそうにない。
4主→ヘルムートは愛じゃなくて恋だからっていうのもあるかもだけど。
まあアレです・・・ヘルムートさんも真のうさみみの紋章持ちなので(笑)
気長に待ってあげてください、永遠にでも。
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