「もう、・・・ちょっと・・・・・・」
「・・・ああ・・・、止まりそうで止まらないな・・・」
「これね、僕の名前の由来なんだよ」
「トンボが・・・・『アキツ』の?」
「そう。ずっと東の方にあるっていう国の、ふるい言葉なんだって。
僕が領主様に拾われたのがちょうど今頃の季節で、屋敷の中庭にいっぱいトンボが飛んでた
からだ、って聞いたことがあるんだ」
「・・・単純そうに見えてそんな古語を使うなんて、あの領主にしては気が利いているな?」
「ふふ・・・まあそう言わないであげてよ。僕けっこう気に入ってるんだから、この名前。
ちょっと興味あったから調べてみたことがあるんだけど、『アキツ』ってトンボのことだけじゃなくて、
その東の国そのものを指す意味もあるんだって。
それから、その国の真ん中にある、綺麗な草原の広がる土地の名前も。
・・・どこまでも広がる秋の草原に、こんなふうにトンボがたくさん、すいすい飛んでるのかな・・・って
想像したら、なかなかいい名前なんじゃないかなって思ったんだけど・・・
・・・なんて、自画自賛だよねぇ」
「いや・・・そんなことない、いい名だと思うよ・・・。
その、アキツの草原・・・・・・」
「『秋津野』・・・って言うらしいよ?」
「・・・いつか、見てみたいな・・・・・・」
「うん・・・。」
「・・・あ!今度こそ ・ ・ ・ 止まりそう ・ ・ ・」
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