※注
前の続き。
クロジャー前提バジャー×クロウ。
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明け方、ふとバジャーは目を覚ました。
カーテンを通してくる光は明け方と言うにはもう大分明るく、でも起きるにはまだ早い、中途半端な時間。
隣ではクロウが安らかな寝息をたてていた。
クロウの部屋のベッドは狭く、二人の間にはわずかな隙間しかない。
ほんの目と鼻の先、行儀よく仰向けに枕に頭を乗せて眠るクロウの横顔を、何か不思議なものを見るような気持ちでバジャーは眺めていた。
何かの弾みで逆になってみようということになったのだ。
だから昨日は、バジャーが、クロウを・・・・
「〜〜〜〜〜っ・・・・・」
思い出しただけでジタバタしたくなる。
だってバジャーは知らなかったのだ。
いつもクロウの手、クロウの身体、クロウの熱を受け止めるのに精一杯で、クロウを見返す余裕なんてなかったのだ。
まさかクロウが、あんなに・・・
「・・・んー・・・・・・」
バジャーの気配を感じたのか、クロウが微かな声とともに寝返りを打った。
いけない、起こしてしまう・・・・
少し離れたくて、バジャーはそっと上掛けをめくってベッドを抜け出そうとした。
とたんに目に飛び込んできたのは、クロウの羽織った白いシャツ。
寝間着代わりか無造作に二番目と三番目のボタンだけが留められたシャツの襟元から覗く鎖骨が嫌でもバジャーの目を惹いた。
そこに触れたバジャーの名を吐息混じりに呼んだ、少し高めの甘い声を思い出す。
────『・・・あ、あぁ・・・・バジャー・・・・』
クロウから見るいつものバジャーも、あんな風だったんだろうか。
すがり付く腕、熱に浮かされたような瞳。
知らなかった。
クロウがあんなに・・・・可愛い、なんて。
そしてクロウを「可愛い」と思ってしまった自分にも驚いたのだ。
昨日あんなに外すのに苦労した三番目のボタン。
今は留められている、それがたぶんバジャーの一線。
それを越えたのか、それともまだ途上で立ち尽くしているのか・・・
半分身体を起こしたまま動けないでいるバジャーの隣で、クロウがわずかに身動きしてゆっくりと目を開いた。
まばたきを二回、バジャーが見下ろしているのに気付いて、口の端に笑みを浮かべた。
「・・・おはよ・・・」
「・・・お、はよう・・・」
「でもさ、まだ・・・早い・・・・」
少し眠たげに呟きながらすいと伸ばされたクロウの腕が、バジャーをもう一度布団の波間に引っ張り込んだ。
三番目のボタンのボーダーラインを、越えても越えていなくても、
「・・・好き」
「うん」
二人分の温もりが、朝までのほんの少しの時間を包み込む。
《END》 ... 2010/06/16
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ネタがネタを呼んだ。恥ずかしくて30回は死ねるー。書いてから2週間くらいしたらほとぼりが冷めてきたので晒してみる。
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